『白銀の墟 玄の月』

やっと読み終えた!
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私が十二国記をちゃんと読んだのは数年前のことなので、18年も待ちわびた方々の足元にも及ばないのですが、それでも待っていたよ…!
小野主上ありがとうございます、大長編の執筆ほんとうにお疲れさまでした。

感想に入る前に、すこし読んだ経緯の話を(自分語り…)。もともと十二国記のことは知っていて*1、読んではみたいと思って実は何回か挑戦したことがあって。たぶんそのころそこまでネットにどっぷりつかっていた訳じゃないから、面白いらしいし読んでみよう、っていう程度で、当然シリーズの一作目から読んでみたはいいものの、どうしてもつらくて読み進められなかった。そのあとも何度か挑戦してみたけど、いつも途中で脱落してしまう。きっとそのときの自分の環境とかメンタルにも影響されるんだろうなとは思うんだけど。

そんなこんなで何度目かの挑戦をしようかなと考えていたところ*2、ジャニーズで知り合った姐さんに「『図南の翼』とかから読んでみるといいよ!」と勧めてもらって、読んでみたらびっくりするほど面白かった。感想を書くと長くなるのでそこはまたいつの日か。でもまだ一作目を読める気がしなかったから、次は「東の海神 西の滄海」を読んだのだったかな。この二冊を読んでやっと陽子の物語を読んでみようという気になれた。このシリーズはこんな世界観なんだ、やっぱり小野作品の面白さは間違いない*3と思って、


結果、ここに行きついたという話。そこからはもう怒涛の勢いで既刊を読破。読み終えるころにはこれを読んでしまったら十二国記の続きが読めない…と悲しみに暮れる程度にはどっぷりと浸かってしまったのだった。うん、間違いなく面白いとは思っていても、一巻マジでつらいよね。十二国記をお勧めする人がこぞって「下巻まで頑張れ」「ネズミが出るまで頑張れ」と言うの同意しかない。私も一人で読んでたころにそれ教えて欲しかった(笑)


というわけで最新作の感想を。

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)

読み終えて「小野主上が書きたかったのは、勧善懲悪の痛快な英雄譚ではなかったんだ」ということが身に染みてわかった…。
いや、うんそうだよね、そんな簡単なものじゃないんですよね…。それにしてもこんなに簡単に人が死んでいく話は想像していなかった。予想の斜め上というか、まあ当然予想なんてできるようなものではないんだけど、なぜかわからないけど、この新作は「正当な王が忠実な部下やあらたな仲間を得て偽王を討つ物語」になるんだと勝手に思っていたんだなと思った。全然そうじゃなかったけど、だからこそ胸を打つしものすごくリアリティのある物語になっているんだろうなあ。阿選を討った事実が歴史書の一文で終わっているところで、結果がこうなることは自明のことで、そこはこの物語に於いては大事な部分ではなかったんだなと思った。

四巻は本当に読んでいるのがつらくて、希望が見えたと思ったら絶望が次々と襲い掛かってくる、そんな展開が本当に心にぐさぐさと突き刺さって、わりと読みながらずっと涙で文字が歪んで見えていた。私は前半の二巻を読んで恵棟が好きだなあと思っていて、三巻の最後に泰麒に暇を願い出るシーンはもう本当に涙ぼろぼろだったんだけど、だから阿選が木札の種明かしをしたシーンはマジで血の気が引いた…え…つらすぎん…?あんなに自分の罪に苦しんでそれでも良心をなくさずに国のために尽くしてきたのにウッ思い出したらまた泣けてきた…。あと飛燕ウワアアアアアアアアン

宮中で一人(ではないけど)戦う泰麒めちゃくちゃかっこよかったし麒麟の本質を超えて意志の力で立ち向かう姿が最後まで本当に美しかった…転変した…。私の頭の中では完全に山田章博氏のあの美しい泰麒ですべてが再生されていたのであああああってなっていた(語彙力)。

耶利の主公はなんとなく最初から琅燦かなあと勝手に思っていたんだけど(てか出てくる人の中だと彼女くらいしかそれらしき人いない気がする)、玄管もそうだった、の、かな。なんか読み終わった後に突然耶利の登場シーンで青鳥を飛ばしていたのをハッと思いだした。最後泰麒が琅燦は敵じゃないって言ってたけど、でも決して味方ではなくない…?そもそも阿選を焚きつけたのは彼女だし山中で妖魔に襲わせたのもそうじゃないの…?あそこも本当つらかった…ああなんでここで!悔しい…って李斎たちと一緒に戦ってるみたいな気分になった。琅燦は最後まで全く行動の意図が分からなかったので、そこみんな短編で読みたいと思うんだけど書いてくださるのだろうか…。

かなり初期のころからずっと助けて力になってくれていた鄷都があんな風に死んでしまったこともつらかったし、朽桟が死んだことも、望みをつないでくれた仲間たちがどんどん簡単に死んでいく展開は理不尽だ!と思ってしまうこともあるけど、それだってこれが本当に生きてる物語だからなのかもしれないと思ってしまうからすごい。面白いとか面白くないとかそういうことを考えること自体が間違っているのだ………(遠い目)。

本当に最後の最後までどうなるかが読めなくって「え、あとこれだけしか頁ないけど???どうなるん????」と思いながら読んでいました。短編集が待ち遠しいです。

*1:そりゃ有名だしホワイトハートって私まあまあ世代だし

*2:なぜか読もうという気だけはあった

*3:その他の小野作品はだいたい読んでいた