『家守綺譚』

家守綺譚 (新潮文庫)

家守綺譚 (新潮文庫)

毎日のように起きるさまざまの不思議な出来事に、驚きつつ、それでも拒絶せず溶け込み受け容れている綿貫氏の姿がいいなあとおもいました。琵琶湖やら鈴鹿の山やら、滋賀や京都辺りの話かな。サルスベリ、ふきのとうなどひとつひとつが植物に絡めたお話になっています。物語の途中から「私」が飼い始める犬、ゴローが賢くてかわいくて、とても良い味を出しています。


今となっては昔のことですが、明治や大正の頃なら、あるいはこのような生活が日常だったかもしれないとさえおもいます。というか、そうであればいいなとおもう。河童や小鬼が立ち現れたり、木が人を恋い、人が人でない存在に嫁いでいくような。やっぱり、梨木さんの作品はどれも素敵な世界観が広がっています。
サザンカ」で、わたしの名前が出てきてびっくりした。女の人が幼友達を追い掛けるシーンで、いきなり聞こえた名前がわたしと同じ。「佐保ちゃんは、春の女神になって還ってくるのだから」という台詞も。わたしは「佐保」ではないけれど、確かにこの字を使うし、春の女神の佐保姫にちなんでつけられたところもなんだかつながるものがある。わたしの場合名前負けだけど笑、こんなところで思いもよらない出来事に、なんだかすごくうれしくおもいました。しみじみ。
春は佐保姫、夏は筒姫、秋は竜田姫、冬の白姫、かあ(創作意欲が掻き立てられるなあ)。